2020年5月15日金曜日

リディアン・クロマティック・コンセプトのトーン・オーダーについて

■リディアン・クロマティック・コンセプトのトーン・オーダー(音の序列)について

【譜例】
まず、これを徹底的に頭に叩き込み全ての調性で関係が思い浮かぶまで訓練をしましょう。
即答できなくても構わないので、仕組みは理解してください。

尚、リディアンから発想しているのは倍音構造の根幹である完全五度に基礎をおいているためであり、マスターしてしまえば古典和声であろうが、教会旋法であろうが、極論すれば無調にも応用できます。

それを体現した1人が武満 徹です。
彼は青年時代にピアノ弾きのバイトをしていた際に、何と進駐軍の兵士(音楽家であったのであろう)の一人からこれを入手し独学でマスターしてしまった。

ジャズの世界では、マイルスやコルトレーン、エヴァンスのみならず、先鋭的なオーネット・コールマンや先日惜しくも亡くなったリー・コニッツ。
彼らも、少なからずラッセルの影響を受け、最終的には独自の音世界を作り上げています。

メソッドのような足枷になるものではないですし、禁則もない。
そこには物には重力がある、時は流れるのと同じ原理がはたらいているだけ。
まさに、宇宙や地球と同じなのです。

そして、美しいかどうか。
究極的には自分が目指す音世界を具現化するための指標になりうるのです。

2020年5月8日金曜日

「How Insensitive」 アドリヴ例

出だしは「L.C.C」に基づいた「Bナチュラル」音を提示し、それをC#dim上で「原調」のDmに回帰させている例です。
アタマだけ見れば、Dmに「ドリアン・スケール」を適用したとも言えます(原旋律を無視)。

二段目はその反対に「B♭」→「Bナチュラル」という動きに意識を向けてフレージングしています。
これがドミナント・モーション(古典和声/バークリー)以外の視点を持ったアドリヴの例です。


2020年5月4日月曜日

リハーモナイズ例

◆ほぼ同じ調性進行の中で、リハーモナイズした例。
どちらが優れているというはなしではありません。私は繊細な下のハーモニーが好きです。
そしてそれが生理的に自然に感じます。耳と作曲の鍛錬の成果ともいえますし、元からの感受性の差かもしれません。
しかし、大衆の感性と乖離するということは苦難の人生を歩むのです。


『ハイドンの名によるメヌエット』(1909) M.ラヴェル/編曲:彦坂恭人

2020年5月3日日曜日

Piascore 楽譜ストア「小さな星のワルツ」 彦坂恭人

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リディアン・トニックを重視する理由

■リディアン・トニックを重視する理由。

これは理論ではなく『倍音』という自然現象のうち、最も最初に現れる変化(First Bias)を基軸にしています。
完全八度(オクターブ)を堆積していってもメロディやコードにグラデーションは作れません(厳密にはオクターブというコードやメロディは出来ますが)。

そこで、次に変化する部分に注目したわけです。前に進むには変化が必要ということを示唆しても居ますね。(ピタゴラスが発見したと言われる)

そうすると、『ドーソ』や『ラーミ』という二つの音の関係が重要になってきます。
これは電子楽器では聞こえませんが、生楽器や声なら少し集中すれば聴こえるようになってきますし、管楽器奏者であれば『差音』を経験した事がある方もいらっしゃるでしょう。

これらは全て自然現象によるもの。決して理論的な整合性からスタートしている訳ではないのです。そこには音があるだけ、音の振る舞いがあるだけで優劣もありません。(ドミナントモーションなどというものも極論すれば、一部の人間が後から身に付けた感覚です)

本来、音は半音単位が最小ではなくもっともっと小さい微分音の世界もある訳ですが、これは小数点を延々と数える様なもので、やはりどこかで割り切ったと言うこともできるでしょう。
人の顔を見る時に、
『あの人の肌の細胞の組織は綺麗ね~』とは感じない様に、全音と半音は一般的に認識できる最小単位として優れていたのではないでしょうか?固定の絶対音感にそこまで優位性がないのはこの為です(絶対音感のある音楽家の場合も頭でかなり補正しているはず)。

そして、いよいよ音を積み上げていき音階やら和音を作っていく訳ですが、最初から7音の世界というのは複雑過ぎます。
原点はあくまでもペンタトニックにあったという仮説には相応の信憑性があるように思います。
勿論、俗謡や民謡を眺める限り意図せずして半音やそれ未満のコブシが現れているわけですが、これもペンタトニックを土台にした上で調性的な判断は可能なのです。
まずは『中心』を決めることが大切。感じ取ることが重要です。

ジョージ・ラッセルは音にもリズムにも重力があると感じ、何とかそれを概念化しようと試み、他にはないユニークな見方を提唱した訳です。そこには善も悪もないため、分かりづらいとされてしまっているのでしょう。

音楽は二元論では片付きません。勿論、大きな枠として大小、強弱、優劣という見方はあって良いのですが、あくまでも音はエレメントでしかありませんし、それはただ『ある』だけなのです。

2020年5月2日土曜日

『小さな星のワルツ』(2000) 作・編曲:彦坂恭人

質問コーナー

【質問コーナー】
Q.「実践!本気で学べる究極のジャズ理論」彦坂恭人・著
はじめまして。
「P.79譜例18」の下段のメロディックマイナースケールのダイアトニックコードについてです。
7番目の和音のシレファラのラに「♭」がついていて、Bdimとなっています。メロディックマイナーのラには「♭」がつかないと思うのですが、どうしてbがついているのでしょうか?
何冊かジャズ理論の本を読んでいますが、最後まで読み通せたのはこの本だけです。難しいところもあり、1度では理解できないので、何度も読み返しています。
この本に出会えてよかったです。
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A.該当の箇所の原稿を確認しましたが、これは誤植かと思われます。失礼致しました。
仰る通り、メロディック・マイナーの場合「7番目」は「◆m7(♭5)」が正解です。
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◆補足◆
編集・校正には複数名であたっておりますが、どうしても人間のすることですから見落としがあります。大変申し訳ございません。
どうか、疑問を感じた場合、自分が正しいはずと確信を得た場合は遠慮なくご質問下さい。
→「常に先生が、出版物が、専門家の情報が合っていると思わない様に」というのは私が20代頃に感じたことの一つです。市販の楽譜も同様で、たくさん誤植や音抜けがあるのです。(肯定している訳ではありませんが)
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音楽理論は非常に多岐に渡っており、本来はその全てを知るくらい学ばなくては現代のジャズを理解することは困難です。しかし、その本のベースになっている「バークリー・メソッド」は非常に良く体系立てられているため、初めに学ぶのには適していると思います。
※現在、コロナウイルスの関係で対面レッスンは(強い希望がある方、体調に自信のある方など以外)自粛しておりますが、スカイプや添削レッスンは承ります。
ご興味があればぜひご受講下さい。

リディアン・クロマティック・コンセプト研究(2)

■リディアン・クロマティック・コンセプト(研究2)
ジョージ・ラッセルは一般的な音楽教育を受けてきた学習者やジャズマンを対象に説明を書いているため、その本質が伝わりにくくなっているのは事実です。

ATN社から出版されている訳書に、〇リディアンのⅡ度に形成される『コード』の代表として『7th』という『型』が、紹介されていますが、本来は3度堆積(三度で積む)させる必要もなく、リディアントニックとモーダルトニックさえ押さえていれば後は、自由に取捨選択して良いのです。

つまり、コードネームで表せないような形の和音も作ることができるのです。
これは省略形でもなく、転回形でもなく、そのまま受け止める事が大切です。

ハービー・ハンコックやチック・コリア、キース・ジャレット以降のジャズは言うに及ばず、自由な調性音楽を書く人が多いロシア音楽に影響を受けているジョン・ウィリアムスの作品の中にも『なんじゃこりゃ!』という和音を時々見かけますが、彼らは調性というものを幅広くかつ繊細に捉えてコントロールしているのです。