2018年6月23日土曜日

楽曲コンペ「作曲家不要の時代」

商業音楽を目指す人には希望を削ぐかもしれないが、今はいい音楽を書く人は求められていない。

ベテランで残っているのは、昔だったら出てこなかったような三線級の人達ばかり。彼らは粘りと適応力で保っている様なもの。

確かに「DAWの操作(打ち込み~MIX)」には長けているし、曲などはあっという間に作ってしまえるのだが、そこに心を揺さぶる様な音楽は皆無である。

不協和音も内声の繊細な動きも、ダイナミクスのあるミックスも排除した予定調和の塊のような音楽ははっきり言って音楽ではない。

ただ、音楽をやろうとしたら今の業界では生き残れない。

ノリと音圧と人工美で固められた騒音が求められていることを意識して作るか、一切商業音楽方面は見ないという選択肢もあるだろう。

今のプロと昔の、本物のプロは月とスッポンどころではない開きがある。
少なくとも音楽をしっかりやっている人間には分かる大きな劣化が起きていてそれは、まだ数年は続くのではなかろうか。

2018年6月11日月曜日

「ヒット曲の料理人/編曲家・萩田光雄の時代」

黄金期のポップスで一線で活躍したアレンジャーである萩田光雄さんの総決算インタビュー集。

今のラウドな「消費財音楽」ではなく、一つ一つ精魂込めて作られたポップスを聴くことが今の作曲家にもアレンジャーにも必要です。

2018年6月6日水曜日

【三度目の殺人】是枝裕和監督

The Third Murder(2017)

監督・脚本:是枝裕和
製作:小川晋一、原田知明、依田巽
出演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、斉藤由貴、吉田鋼太郎、満島真之介、松岡依都美、市川実日子、橋爪功
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ

是枝さんはいいですねぇ。
政治・法律と個人の「溝」を正面から抉る作品を作る人です。
小手先の技術ではなく「情感」を軸にするために人間の矛盾や葛藤、そして打算。
様々なおかしさや哀しさが浮き彫りになります。

天の邪鬼で情熱家の被告と、打算的だがどこか純粋さのある弁護士のコントラストはとても面白いです。
広瀬すずの存在感もインパクトがあり「天性の女優」(彼女が傲慢だと言われているところが尚更に素敵)を感じます。

しかし、見ていてどこかホッとするところがあるのは「人間」をしっかり捉えられている証左です。

2018年6月2日土曜日

女は女である

【女は女である】(1961)

Une femme est une femme

監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
原案:ジュヌヴィエーヴ・クリュニー
製作総指揮:ジョルジュ・ド・ボールガールカルロ・ポンティ
出演:ジャン=クロード・ブリアリ、アンナ・カリーナ、ジャン=ポール・ベルモンド
音楽:ミシェル・ルグラン

「私は破廉恥な女ではないわ、ただの女よ」というラストの台詞から取られたとも思われる邦題が面白い。

当時のハリウッド巨匠達の大金をかけた名作映画に対するアンチとして、またオマージュとして作られたラブコメディ映画。

恐らくある程度、当時の映画に通暁していないと意味が分からない部分(中のジョークなど)もあるだろうが、元々がゴダールは「解りやすい映画」を撮ろうとはしていないのだから、そのまま雰囲気を楽しむだけでも充分である。

「シェルブールの雨傘」を書いた名匠ミシェル・ルグランの素晴らしいスコアと共に当時の凝り固まった映画界に、新風を吹き込んだ天才ゴダールの傑作の一つである。