2018年7月6日金曜日

『歌もの/音域』のはなし

CDという固形物の売れ行きのみを見ると、今やポップス=アイドルかアニソンという図式になっていますが、所謂アーティスト(作詞、作曲、演奏までする人)とは何が異なるのでしょうか?

大きな点の一つに『音域』があります。

私は作曲を始めた頃は歌ものよりもインスト(劇伴)に興味があったので、精々が楽器の音域くらいしか調べませんでした。

趣味で鍵盤や打ち込みをメインに曲を作っている人の例に漏れず、トランペットでどこまでも高い音を吹かせたり、ヴァイオリンでチェロの音域まで行ってしまったりしても何の問題も起きなかったのです。

それが、少しは作曲というもので仕事をするようになり、たまに生楽器のアレンジを頼まれたりすると楽器には『出せる音と出せない音がある』という冷厳な事実に直面しました。

さすがに音大に行き、オーケストレーションを学ぶ頃には楽器法という有難い授業があったりして少しずつ音域を覚えていくのですが、何故か身近にある『声』というものには無頓着でした。

最近になって商用の歌ものの音楽に積極的に触れるようになり、アイドルやアニソンと言われるジャンルは作曲家にとって相当な制限があることを知ります。
ボーカリストのブログやら、ボイトレの専門家の書いているものを読んでもまぁ、皆さん言っていることがバラバラで基準が分からなかったのですが、それもその筈、人間も楽器と同じで多様性に富んでいるのです。

特に人気の高い女性歌手の場合、中央のドの真下のラを基準に『mid1 A』という言い方があり、そこからオクターブ上のラも飛び越えてレまで行ったところが『mid2 D』と呼ばれます。
この範囲で書くと安全等とも言われます。(実際は高いドとレの辺りにジョイントがあり、裏声に行くか行かないか不安定になる様です。クラリネットと同様で)

この音域は実は声楽で言うところの『アルト(女声の低い方)』とほぼ一致します。つまり、平均値を『低い音域の楽器』に合わせるという素直な考え方が一つは正解。

しかし、女性も生まれつき高い声の方は結構多くて、彼女達にこの音域は低すぎて歌いづらいのです。

ソプラノの音域は『mid1 C~Hi A(上の加線がつくもの)』が和声学で習う音域ですが、なかなか当たり前に出せるという事ではないにしろ少なくともアルトの方から3度~完全4度も上にスイートスポットが有ります。

コンペティションなどの平均値合戦になると皆、安全性や確実性を求めて低い方に合わせて書いている傾向がありますが、実はアイドルだって高い声が出せる人も居ますし、声優さんに至ってはアニメ声というくらいでソプラノの方が出しやすい人も居るのです。

作曲家は原則として浮かんだ音域で掻けば良いのですが、対象が決まっている場合はその歌手の音域は最低限調べておいた方が効率的です。

反対にアーティストはもうやりたい放題。ユーミンは男性の専売特許の様な低い音域も平気で歌いますし、平井堅は女性も歌えるかという様な高さまで幅広いレンジで飛び回ります。
ミスチルも男性で歌いこなせる人は多くないでしょう。高い上にリズム感が独特なので。

歌もののプロの作曲家を目指すなら、打ち込みの技術は勿論、どうすれば素材が活きるのか、限られた音域で表現を多彩にするには何を学べば良いのかに意識的になって下さい。

音楽性というのはデジタルだけでは計れないものなのです。

2018年7月2日月曜日

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『実践!モード作曲法』彦坂恭人

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2018年6月23日土曜日

楽曲コンペ「作曲家不要の時代」

商業音楽を目指す人には希望を削ぐかもしれないが、今はいい音楽を書く人は求められていない。

ベテランで残っているのは、昔だったら出てこなかったような三線級の人達ばかり。彼らは粘りと適応力で保っている様なもの。

確かに「DAWの操作(打ち込み~MIX)」には長けているし、曲などはあっという間に作ってしまえるのだが、そこに心を揺さぶる様な音楽は皆無である。

不協和音も内声の繊細な動きも、ダイナミクスのあるミックスも排除した予定調和の塊のような音楽ははっきり言って音楽ではない。

ただ、音楽をやろうとしたら今の業界では生き残れない。

ノリと音圧と人工美で固められた騒音が求められていることを意識して作るか、一切商業音楽方面は見ないという選択肢もあるだろう。

今のプロと昔の、本物のプロは月とスッポンどころではない開きがある。
少なくとも音楽をしっかりやっている人間には分かる大きな劣化が起きていてそれは、まだ数年は続くのではなかろうか。

2018年6月11日月曜日

「ヒット曲の料理人/編曲家・萩田光雄の時代」

黄金期のポップスで一線で活躍したアレンジャーである萩田光雄さんの総決算インタビュー集。

今のラウドな「消費財音楽」ではなく、一つ一つ精魂込めて作られたポップスを聴くことが今の作曲家にもアレンジャーにも必要です。

2018年6月6日水曜日

【三度目の殺人】是枝裕和監督

The Third Murder(2017)

監督・脚本:是枝裕和
製作:小川晋一、原田知明、依田巽
出演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、斉藤由貴、吉田鋼太郎、満島真之介、松岡依都美、市川実日子、橋爪功
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ

是枝さんはいいですねぇ。
政治・法律と個人の「溝」を正面から抉る作品を作る人です。
小手先の技術ではなく「情感」を軸にするために人間の矛盾や葛藤、そして打算。
様々なおかしさや哀しさが浮き彫りになります。

天の邪鬼で情熱家の被告と、打算的だがどこか純粋さのある弁護士のコントラストはとても面白いです。
広瀬すずの存在感もインパクトがあり「天性の女優」(彼女が傲慢だと言われているところが尚更に素敵)を感じます。

しかし、見ていてどこかホッとするところがあるのは「人間」をしっかり捉えられている証左です。

2018年6月2日土曜日

女は女である

【女は女である】(1961)

Une femme est une femme

監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
原案:ジュヌヴィエーヴ・クリュニー
製作総指揮:ジョルジュ・ド・ボールガールカルロ・ポンティ
出演:ジャン=クロード・ブリアリ、アンナ・カリーナ、ジャン=ポール・ベルモンド
音楽:ミシェル・ルグラン

「私は破廉恥な女ではないわ、ただの女よ」というラストの台詞から取られたとも思われる邦題が面白い。

当時のハリウッド巨匠達の大金をかけた名作映画に対するアンチとして、またオマージュとして作られたラブコメディ映画。

恐らくある程度、当時の映画に通暁していないと意味が分からない部分(中のジョークなど)もあるだろうが、元々がゴダールは「解りやすい映画」を撮ろうとはしていないのだから、そのまま雰囲気を楽しむだけでも充分である。

「シェルブールの雨傘」を書いた名匠ミシェル・ルグランの素晴らしいスコアと共に当時の凝り固まった映画界に、新風を吹き込んだ天才ゴダールの傑作の一つである。