CDという固形物の売れ行きのみを見ると、今やポップス=アイドルかアニソンという図式になっていますが、所謂アーティスト(作詞、作曲、演奏までする人)とは何が異なるのでしょうか?
大きな点の一つに『音域』があります。
私は作曲を始めた頃は歌ものよりもインスト(劇伴)に興味があったので、精々が楽器の音域くらいしか調べませんでした。
趣味で鍵盤や打ち込みをメインに曲を作っている人の例に漏れず、トランペットでどこまでも高い音を吹かせたり、ヴァイオリンでチェロの音域まで行ってしまったりしても何の問題も起きなかったのです。
それが、少しは作曲というもので仕事をするようになり、たまに生楽器のアレンジを頼まれたりすると楽器には『出せる音と出せない音がある』という冷厳な事実に直面しました。
さすがに音大に行き、オーケストレーションを学ぶ頃には楽器法という有難い授業があったりして少しずつ音域を覚えていくのですが、何故か身近にある『声』というものには無頓着でした。
最近になって商用の歌ものの音楽に積極的に触れるようになり、アイドルやアニソンと言われるジャンルは作曲家にとって相当な制限があることを知ります。
ボーカリストのブログやら、ボイトレの専門家の書いているものを読んでもまぁ、皆さん言っていることがバラバラで基準が分からなかったのですが、それもその筈、人間も楽器と同じで多様性に富んでいるのです。
特に人気の高い女性歌手の場合、中央のドの真下のラを基準に『mid1 A』という言い方があり、そこからオクターブ上のラも飛び越えてレまで行ったところが『mid2 D』と呼ばれます。
この範囲で書くと安全等とも言われます。(実際は高いドとレの辺りにジョイントがあり、裏声に行くか行かないか不安定になる様です。クラリネットと同様で)
この音域は実は声楽で言うところの『アルト(女声の低い方)』とほぼ一致します。つまり、平均値を『低い音域の楽器』に合わせるという素直な考え方が一つは正解。
しかし、女性も生まれつき高い声の方は結構多くて、彼女達にこの音域は低すぎて歌いづらいのです。
ソプラノの音域は『mid1 C~Hi A(上の加線がつくもの)』が和声学で習う音域ですが、なかなか当たり前に出せるという事ではないにしろ少なくともアルトの方から3度~完全4度も上にスイートスポットが有ります。
コンペティションなどの平均値合戦になると皆、安全性や確実性を求めて低い方に合わせて書いている傾向がありますが、実はアイドルだって高い声が出せる人も居ますし、声優さんに至ってはアニメ声というくらいでソプラノの方が出しやすい人も居るのです。
作曲家は原則として浮かんだ音域で掻けば良いのですが、対象が決まっている場合はその歌手の音域は最低限調べておいた方が効率的です。
反対にアーティストはもうやりたい放題。ユーミンは男性の専売特許の様な低い音域も平気で歌いますし、平井堅は女性も歌えるかという様な高さまで幅広いレンジで飛び回ります。
ミスチルも男性で歌いこなせる人は多くないでしょう。高い上にリズム感が独特なので。
歌もののプロの作曲家を目指すなら、打ち込みの技術は勿論、どうすれば素材が活きるのか、限られた音域で表現を多彩にするには何を学べば良いのかに意識的になって下さい。
音楽性というのはデジタルだけでは計れないものなのです。
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