2018年8月23日木曜日

坂本龍一さんとの対話(2)

※こうして個人的なやり取りを彼の同意なく開示することは露悪趣味を通り越してプライバシーの何たらと言われかねまい。
しかし、私はどんな罵倒を受けようが、訴訟を起こされようが伝えなくてはならないものは伝えることに決めている。

社会性などという一時的な幻想はウンザリであるし、アーティストや芸能をブラックボックスにする時代などもうとっくの昔に過ぎているのである。

音楽を無料にしたのは素人だけではない。
コンペティション等というのも、プロをタダ働きさせる、体の良い仕組みに過ぎないことを皆分かっているのだろうか。

前提が狂っているものを商習慣だからと盲目的に(これも差別用語だそうだ)受け継ぐレーベル、音楽事務所の意識の低さには、全く別の意味で頭が上がらない。
ただの愚痴になってしまった。
私の愚痴より遥かに示唆に富む彼の言葉に耳を傾けよう。

・・・・・
以下、坂本龍一氏の言葉。
※は私の個人的な見解に基づく註釈である。

ずいぶん凝ったハーモニーを付けましたね~!(^^;
※拙著『ポピュラー和声学』のラフマニノフ『ヴォカリーズ』を参照のこと。彼は常にメロディに関しての指摘はしない、ハーモニー。それがアカデミックな場所を通った人間の興味の中心にはあるようだ。

 
【音楽的なルーツについて】
その通りだと思います。
(※芸大ですものね)
ぼくの根っ子はやはりBach、BeethovenとDebussyだと思います。
ただ、実際の音の動かし方はなかなかDebussyのようにはいかず、むしろアカデミックなRavelの方に近くなってしまいます。
ぼくもバッハ、ベートーベンからほとんどロマン派は聴かずにドビュッシーにいかれてしまったので、なか100年分くらいが抜けています。最近になって勉強のつもりでワーグナー、ブルックナー、マーラーなどを聴いています。
最初はどれも似たような曲なので、何番のシンフォニーなのかも分かりませんでしたが、最近は何番かぐらいは分かる程度になりました。

ドビュッシーは教科書になりにくい、定型化しにくいのですよ。一つ一つの楽想がinvention=発明に満ちていて。もちろん先輩のマスネーやフォーレ、ましてやワーグナーからも大きな影響は受けているのですが。
不思議ですね。

【大河ドラマテーマ~日本の作曲家】
坂田晃一さんが先生ですか!
大河ドラマの主題曲は何度か通して聴いているのですが、いつもいいなと思うのは坂田晃一さんの曲です。
もちろん武満さん、湯浅さんなどのもいいのですが、和声の洗練さとメロディーのポピュラリティのバランスは、坂田さんは抜群だと思います。
お会いしたことはありませんが。

※彼がここまで坂田晃一を認めていることに私は感涙した。
 

【ハリウッド映画音楽とクラシック】ぼくもロシアはあまり聴いていません。 ジェリーゴールドスミス、ぼくも天才的だと思います。
彼の師匠のアレックスノースの方がユニークですが。モリコーネもあなどれません。
ロシア音楽に詳しいのですね。

※私が挙げた作曲家はボロディン、ハチャトゥリアン、スクリャービン、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、ストラヴィンスキーなど近現代に限られていた。
例えばソフィア・グヴァイドゥーリナ、ニコライ・カプースチンには触れていない。

ベルリオーズからチャイコフスキーという影響関係が面白いとは思うのですが、何が苦手って多分チャイコフスキーの音楽が一番苦手だと思いますーアメリカ人が実は一番好きなのが彼。

ドビュッシーがロシアの流れから影響を受けているのも面白いですが、ぼくはよく知りません。

戦後のハリウッド映画音楽に影響を与えた一人として、シェーンベルクの存在は大きいです。私塾のようなものを開いていたそうです。
彼の家が今でも残っています。
※その他に亡命した作曲家はプロコフィエフ、ストラヴィンスキー、バルトーク、コルンゴルト、マリオ=テデスコなど
 

【言語について、アメリカ人が好きな作曲家について】
現在話されている言語で多いのは、スペイン語、中国語、英語なんでしょうね。でも外交には英語、フランス語でしょうか。

チャイコフスキーの系統ではやはりラフマニノフですね。
これもチャイコフスキーと並んでアメリカ人が好きです。ラテン語に近いならイタリア語が外交の公用語になってもおかしくなかったのになぜかフランス語なんですね。

19世紀まではヨーロッパの普通の学校でもラテン語やギリシア語は小さい頃からみなやっていたそうです。ランボーなどは天才的だったとか。
もっとも同時期に、フランスといっても地方地方で異なる言語があり、大きく北フランスと南フランス(プロヴァンス)ではお互いに通じないぐらいだったと言われます。

有名なファーブルが少年の時に南からヒッチハイクでパリに出て、全く言葉が分からなかったと書いてあるのが印象的でした。
やはりフランス革命のインパクトでしょうかね。そうなるとナポレオン説もあながち間違っていないかもしれません。

その頃、プロイセンはまだバラバラの国で統一したネーションステートではありませんでしたから。

ちなみにドイツがヨーロッパの『田舎』と言われる所以は、ドイツ出身のローマ法王が歴史上ほとんど居ないことからくるそうです。
最も多かったのはオーストリア=ハンガリー帝国だそうで。

 
よほど映画好きでないと知らないですね。ジェリーゴールドスミスやアレックス・ノース、コルンゴルトなんて一般の方はご存じないのでしょうか?

オーストリア=ハンガリー帝国は第一次大戦が終わるまで存在していたわけで、世界史の中でも重要ですね。未だにオーストリア人はドイツ人に対して優越的な感情をもってるように見受けられます。
・・・

※今回の彼の言葉には文化人類学の要素も入っている。
人を知るために音楽を探り、歴史を探っているようにも思える。
彼にとって音楽は特別なものであろう。
しかし、その興味は単一ジャンルに留まることを知らない。

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