モードからフーガまで
『実践!しっかり学べる対位法』
編・著 彦坂恭人(自由現代社)
私の知る限り、あらゆるジャンルにおいて『音楽』は加速度的に『非音楽的』になってきていて『音響・サウンド重視』が主流になるようにも思えます。
それは時代・科学技術の趨勢であり、止めようとか逆らおうとする類いのものではないのでしょう。
しかし、人間が有機体で、生身で有る限りは『数字で割りきれない』部分は必ず残るのです。全てを理論化、合理化していくことに幾ばくかの不安を覚えますし『音楽的』であることは『大切な何か』を忘れないために重要だと感じています。
『対位法やフーガ』は音響技術に頼らずとも音楽の力(特に旋律)で立体構造を作り出し、聴くものの感情や知性に深く入り込むことが出来る、人間の叡知の結晶です。
そして『モード』は多様性を掴む為のヒントになり得ます。
これはジャンルを超えた音楽の本質に近付くために必要不可欠です。
理論化や合理化に抵抗しながら『理論書のようなもの』を書くというのは中々に難しい作業でしたが、私は常に『ポップである』ということを忘れたことがありません。
それはJ.S.バッハも実は同じであったのではないかと密かに思っています。
彼の音楽は今のポピュラー音楽の様に不必要にうるさくもないですし、凍てつくような数学の塊でもありません。
とても、感情溢れる音楽であり、時にメランコリックですらあります。
偉い先生方が書かれたものには遠く及びませんが、私なりの独自の視点と感性から生み出された『対位法』の書籍は『音楽の作曲』に興味のある皆さんに、何らかの感興を呼び起こすものであることを願って止みません。
今回は必ずしも『易しく学べる』に重点はおいていませんが、中世やルネサンスの作家まで研究した結果見えてきたことを本当に自由に書いています。
音楽ってなんだっけ?と一度でも考えたことのある方は是非読んでみてください。
彦坂恭人